7月29日、アメリカ、ニューヨークにあるジェームズ・ビアード・ハウスにて、京都嵐山吉兆の徳岡邦夫総料理長による晩餐会「マスターピース・ダイニング “Umami:A Modern Japanese Dégustation”」が開催された。アメリカ料理界における最も権威ある団体、ジェームズ・ビアード財団とUMAMIインフォメーションセンターとの共催にふさわしく、有名シェフやフードジャーナリストら、アメリカの食業界に影響力を持つ53名の豪華な顔ぶれが集まり、5時間におよぶディナーの間、各テーブルとも“うま味”に関する話題で盛り上がった。

ジェームズビアードハウス
ジェームズ・ビアード財団(The James Beard Foundation)は、“アメリカにおける美食の父”と呼ばれるジェームズ・ビアード氏の死後、彼の功績をたたえ、食全般の啓発と、業界発展のために優秀なシェフを育成すべく奨学金を提供する目的で作られたNPO財団である。アメリカ料理界における最も権威のある団体であり、毎年、財団より発表される「ジェームズ・ビアード・アワード」は、“アメリカ料理界のアカデミー賞”とも呼ばれ、全世界から注目を集めている。また、会場となったジェームズ・ビアード・ハウスは、ビアード氏の元自邸であったマンハッタン・グリニッジビレッジのタウンハウスで、氏の没後、開放され、世界中から有名シェフが集まり料理を披露、そのイベントの売上は財団の運営費とされている。
「マスターピース・ダイニング」は、ジェームズ・ビアード財団が開催する多くの料理イベントの中でも最も格調が高く、日本人で、この「マスターピース・ダイニング」の料理人として腕をふるうのは徳岡氏が初めてとなった。料理の試作・仕込みは、7月24日から4日間、ブーレーレストラン・テストキッチンで行われ、現地のプレスによる取材やインタビューも行われた。そして、本番前日の28日からは、会場のジェームズ・ビアード・ハウスにて最終の仕込みや本番に向けた準備が進められ、食材の調達は、吉兆のOBで、ニューヨークの有名レストランでシェフとして活躍する「MORIMOTO」石井義典シェフと「ブーレーアップステアーズ」山田勲シェフ。業者を通じて日本産、又は、現地調達可能な良質な食材が集められ、さらにマンハッタンのマーケットや高級スーパーでも調達を行い、徳岡氏はそれらを用いて料理を試作、最終的に使用する食材・および、メニューが決定された。
晩餐会は、ニューヨークの有名シェフ、デビット・ブーレー氏、マイケル・ロマノ氏やフードジャーナリストのフロレンス・ファブリカント氏、 ジョシュ・オザースキ氏、媒体として、ニューヨークタイムズ、ニューヨークマガジンなど、米国の食業界に影響力を持つ錚々たる顔ぶれが集まり、オードブルのレセプションからスタートした。なお、各メニューと一緒に出されたシャンパンやワインは、ジェームズ・ビアード財団の働きかけによりカルフォルニアの著名なワイナリーから寄付されたものである。
ディナーのアミューズとして提供されたのは、「小玉葱昆布煮宮崎牛生姜煮柚子風味そぼろ添え」など3品。次に、大根を茶道具の雪洞に見立てた灯りに浮かび上がらせるという工夫を凝らした前菜「オマール海老の焼霜、昆布出汁漬け雲丹」等が登場し、参加者の目を楽しませた。「蛤の汐汁」に続くメインディッシュは「バターうま味”ソース」など3種類のソースを添えた「金目鯛の炭焼き」と「宮崎牛昆布出汁シャブシャブ肉のタマネギ 根菜、山葵和え」の2品。さらに「昆布出汁と米のリゾット」、「昆布のうま煮」、「ブロッコリーラブの昆布漬け 削り節のトッピング」などが登場し、昆布をたっぷりと味わえるオリジナルうま味料理に参加者は大変満足した様子だった。デザートの「抹茶シャーベット、カスタード風味の白玉、水羊羹のカカオパウダーかけ花穂紫蘇添え」など3品で、5時間に及ぶディナーは締めくくられた。

雪洞にろうそくの火がともされた前菜の並ぶテーブル
今回、“うま味”をベースにした料理の美味で繊細なプレゼンテーションは高く評価され、参加者の間で“うま味”に関する意見交換が積極的に行われた。徳岡氏は挨拶の中で、日本料理には素材そのものの味を楽しむ文化があると前置きした上で、だしのきいた味付けはそれだけで満足度が大きく、上手にだしの“うま味”を使えば、油脂が少なくとも満足感を得ることができる。大事なことは“うま味”と何を組み合わせるのか、どうやって食べるのかだと語り、美しい料理の数々とともに“うま味”の重要性を改めて認識させるきっかけとなった。

うま味について語る徳岡氏