“うま味”発見の父、池田菊苗博士の出身地である京都で、2008年11月30日〜12月8日の9日間にわたり“うま味サミット in 京都”が開催された。 このサミットは京都市長 門川大作氏の提案によるもので、京都市、京都市教育委員会、NPO法人うま味インフォメーションセンター等の主催で料理教室、公開講座やセミナー、食育の授業など、うま味発見100年を記念する様々なイベントが開かれた。
12月6日 市民公開講座「世界に注目されるうま味のひみつ」 京都市京都産業会館シルクホール
12月6日に開催された「市民公開講座」では、京都市長 門川大作氏の挨拶に続き、京都の老舗料亭“菊乃井”主人•日本料理アカデミー理事長 村田吉弘氏による基調講演「世界で注目される日本料理」が行われた。これまでの国内外における日本料理の普及活動を通じ、日本料理におけるだしとうま味の重要性を強調、また近年、急速に海外の著名シェフたちの間で、うま味への関心が高まっていることを述べた後、昆布を手に持ち、「甘味・塩味・酸味・苦味に続く第五の味、うま味は、日本が誇りとする文化。自信をもって世界に普及すべきものであり、うま味はこれから世界に爆発的に広がっていくだろう」と語った。
続く「うま味座談会・世界に注目される“うま味”の秘密」では、京都大学大学院教授 伏木亨氏をコーディネーター役に迎え、京都吉兆嵐山本店総料理長 徳岡邦夫氏、オテル•ドゥ•ミクニ オーナーシェフ 三國清三氏、イル•ギオットーネ オーナーシェフ 笹島保弘氏の3人のシェフによる座談会が行われた。伏木教授は「うま味には、ひらがなの”うま味”と漢字の”旨味(おいしい味)”があるが、今や、ひらがなの“うま味”は、世界の共通語になっている」と示唆し、うま味に付随する風味は国や地方によって異なるが、うま味そのものは世界共通の普遍的な味覚であることを紹介した。そののち、3人のシェフたちは自らのうま味観、自身の専門である日・仏・伊の料理において「うま味」をどのように生かしているか、海外のシェフたちがうま味にどのように反応しているかなどを語った。 徳岡氏からは7月のアメリカでのうま味サミットの経験について、三国氏からは10月にドイツで開催された世界料理オリンピックでの日本ジュニアチーム‘Umami Team’の入賞、笹島氏からはミラノ料理サミットで紹介した昆布だしを使ったイタリア料理などの話題が提供され、楽しく和やかな雰囲気の中、大いに会場を沸かせた。
最後にうま味の持つ将来の可能性について討議し、伏木氏は「うま味は世界の人々に美味しさをあたえるだけではなく、子供達がうま味を知り、体験することは食の未来を育て、世界を健康にする可能性を持っている」と述べ、1時間にわたる熱論を締めくくった。
座談会に引き続き池田菊苗博士のうま味発見の道筋を描いたドキュメンタリードラマ「AMBITION(志)」が上映され、700人の聴講者たちに多彩な内容で「うま味」を伝えることができた。
なお、会場に設置された主催・後援団体のブースでは、昆布だしの試飲や食育活動、世界各地でのうま味イベントを紹介し、様々な角度からうま味を実感できる場となった。

京都市長 門川大作氏の挨拶

村田吉弘氏による基調講演

うま味座談会の様子。コーディネイターの伏木亨氏と3人のシェフ•パネリストたち
12月7日 日本料理フェローシップ公開ワークショップ
NPO法人日本料理アカデミー・NPO法人うま味インフォメーションセンター・
NPO法人日本食レストラン海外普及推進機構 共催
第4回日本料理フェローシップ公開ワークショップが12月7日に京都調理師専門学校で開催された。日本料理アカデミーは、日本料理の発展を目的に、教育及び文化・技術研究とそのグローバルな普及を目的に2004年に発足して以来、フェローシップをはじめ、海外の若手シェフとの交換事業、食育事業を行っている。
今年のフェローシップは「うま味サミット in 京都」の一環として行われ、アメリカ、イギリス、フランスで活躍する若手シェフ5名が来日、有名日本料理店厨房での研修や、茶の湯研修、生産農家視察など実地体験を通して、“うま味”文化を育んできた日本の食文化の背景にある風土や伝統を含めた日本料理の研修を行った。

フェローシップに参加した5名のシェフ。左からデビット・チャン氏、クロード・ボジ氏、サット・バインズ氏、マウロ・コラグレコ氏、マイケル・アンソニー氏
研修最終日の公開ワークショップでは、日本での研修の成果をもとに、各シェフが“うま味”をテーマに趣向を凝らしたうま味料理を披露した。
マイケル•アンソニー(アメリカ「グラマシー•タヴァーン」シェフ)
松葉蟹・柚子・金時人参など、京都の冬の素材を、だしをベースにしたうま味のきいたドレッシングであえた、彩り豊かな一品、松葉蟹のサラダ。

マイケル•アンソニー氏の料理
デヴィッド•チャン(アメリカ「モモフク」シェフ)
昆布とベーコンー和洋両方のうま味食材を使いしっかりとったスープに、水菜・金時人参など、旬のうま味たっぷりの日本の野菜を加えた印象的な京野菜のスープ。

デヴィッド•チャン氏の料理
マウロ•コラグレコ(フランス「ミラズール」シェフ)
聖護院蕪・赤カブ・金時人参などの京野菜と、フランスのロマネスコなど、うま味たっぷりの旬の野菜を組み合わせ、一番だしに白味噌を合わせた、まろやかで味わい深いスープを注いだ東西うま味のマリアージュ。

マウロ•コラグレコ氏の料理
サット•バインズ(イギリス「レストラン•サット•バインズ•ウィズ•ルームス」シェフ)
豚肉、車海老、カリフラワー、柿、という彩りと食感の異なる数種類の素材を、昆布だし、柚子、イギリスのうま味調味料とも言うべき「マーマイト」で下味をつけ組み合わせた凝った一品。

サット•バインズ氏の料理
クロード•ボジ(イギリス「ハイビスカス」シェフ)
柚子に隠し味のわさびを利かせたアイスクリーム、鮮やかな苺のソース、空豆と和三盆のクルスティヤン、梨など、日本の食材をふんだんに使い、そこに真空調理で風味を引きだした添えものを組み合わせた発想力豊かなデザート。

クロード•ボジ氏のデザート
5人の料理の試食に続き、「日本料理とうま味~特殊性と普遍性」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。それぞれが研修期間中に捕らえたうま味について語り、今後の可能性も含めて、活発で興味深い意見交換が繰り広げられた。老舗料亭の主人からなる講師陣は研修生たちの吸収力の速さに驚きを隠せない様子だった。
フランスから参加したマウロ•コラグレコ氏は「うま味は、日本から海外に伝えるものといった日本の独占的なものではない。西洋では、以前は意識されていなかったが、既に、うま味の認識は広まっており、今や十分に活用されている味覚である」と語り会場からは拍手が起きた。最後に5人のシェフ達からこの研修に携わった面々への感謝の言葉が述べられ、シンポジウムは無事に幕を閉じた。
12月8日 有名外国人シェフによる食育事業 (京都市立日吉ヶ丘高等学校)
うま味サミットの最後を飾ったのは、フェローシップに参加したシェフ、サット・バインズ氏とクロード・ボジ氏の2人による「食育事業」だった。京都市立日吉ヶ丘高等学校英語科2年の生徒40名に、彼らが料理界に入ったきっかけ、京都での体験や彼ら自身のうま味観、また料理の極意や料理人としての思いを英語で語った。
2人は1週間の研修で得たうま味の知識をフル活用し、1時間目は視聴覚室でのうま味講義でトマトや昆布だしの試飲を通じてうま味の理解を図った。2時間目は家庭科室で2人のシェフがオリジナルの「うま味料理」を調理、その場で生徒たちに振舞うという活気ある授業が行われた。バインズ氏は、昆布だしで24時間真空調理した豚バラ肉を軽くソテーし、イギリスのうま味調味料とも言うべき「マーマイト(酵母エキスを濃縮したペースト)」を加えてうま味を強調させた「ポーク•ウィズ•マーマイト」を披露、ボジ氏は、この授業のためにイギリスから持参した、イギリス伝統のうま味調味料であるウスターソース(Worcestershire sauce)を使い、軽くトーストしたパンにパルメザンとチェダーの2種類のチーズを乗せ、ウスターソースを一振りしてから再度軽く焼いた「チーズ・オン・トースト」を振舞った。生徒たちは若手実力派のシェフ達によるイギリスのうま味を体験し、調理室は大いに盛り上がった。
授業は、2人のシェフたちの魅力で、終止、寛いだ雰囲気で進み、シェフ達からはおいしさととうま味について、生徒達からはイギリスの食文化や彼らの仕事についてなど様々な質問が通訳を介さずに堂々と繰り広げられた。生徒達はみな、英語とともにうま味を味わうあっという間の2時間を大いに楽しんだ。
他にも、サミットの会期中、料亭の料理人がだしの取り方から丁寧に指導する「親子で作ろう うま味料理教室」なども開かれ、うま味を味わい学ぶ親子の姿が多く見られた。
こうして9日間に渡り、うま味の発見の地、京都で開催された「うま味サミット」は、家庭、学校、地域を通し、京都市民1人ひとりにとって「うま味」を考える絶好の食育の機会になると同時に、欧米諸国のシェフと京都の料理人たちによる「うま味」をベースにした食文化の交流、意見交換などもあり、大変、意義深い催しとなった。

視聴覚質で講義を行う2人のシェフ

家庭科室でうま味料理を披露するクロード•ボジ氏

家庭科室でうま味料理を披露するサット•バインズ氏
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京都に続き、「うま味サミット in ロンドン」の開催が2009年3月に決定しました。
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