食材別うま味情報

最近、日本でも生ハムは、多くの種類が流通するようになり、注目される食材のひとつとなってきました。日本で一般的なロースハムやボンレスハムは、製造中に加熱されますが、生ハムは文字通り、加熱工程がありません。
世界の有名なハムにはイタリアのパルマハム(プロシュート・ディ・パルマ)、スペインのハモン・セラーノ、中国の金華ハム(金華火腿)」などがあり、これらは豚肉を原料とし、塩漬し、長期間熟成して作られた生ハムです。

これら生ハムの製造は、家畜としての豚の飼育とともに畜肉の長期保存を目的に始まり、長年にわたり、その土地の気候に合った製法が確立されました。そのひとつのスペインのイベリア半島の山岳地帯で作られる生ハムのうま味についてご紹介します。

保存条件と期間 作用
仕込み 低温2日間 タンパク質分解酵素が働きやすいように環境を整える
塩漬け 低温約1ヶ月 塩に漬ける。肉自身の持つ分解酵素によりタンパク質がアミノ酸に分解され始める。
塩漬け後1 低温多湿約2ヶ月(冬) 塩を洗い、低温多湿に貯蔵する。
表面にカビが付き、カビにより腐敗防止、風味つけされる。
塩漬け後2 温度を上げ湿度を下げながら約1ヶ月半(春) タンパク質の分解、風味つけが進む。
乾燥 高温、低湿度(夏) 日中の高温で脂が溶け、夜間の低温で身がしまることの繰り返しで
徐々に乾燥が進む。
熟成 短いもので7〜8ヶ月
長い上級品は18ヶ月〜24ヶ月
さらにアミノ酸が増え、うま味が増す。

このように加熱工程がなくても塩分が高く、水分が低く保たれ、カビによる腐敗防止効果もあるために保存性が保たれています。
スペインの科学者 J.J.Cordova氏が、この イベリコ豚の生ハムの熟成について研究した結果を紹介します。

グラフに示されるように原料の豚肉中のタンパク質が酵素により分解されてアミノ酸が増え、うま味成分のグルタミン酸が増えています。
イベリコハムの産地の1つであるスペイン西部山岳部(ポルトガル国境近く)のバダホスの気候(*)を例に見てみましょう。1月の最高気温は12℃、最低気温は3℃、降水量は約50mmであり、東京と大きな差はありません。しかし、8月は、最高気温33℃、最低気温17℃、降水量がほぼゼロであり、日中と夜間での気温差が大きく、そして湿度の低さがうかがえます。このように冬の低温多湿、夏の高温かつ日較差の大きく、低湿であることがうま味のある生ハムを作り出す恵まれた気象条件と言えるのでしょう。

(*:Zen Tech 世界の気温より)

生ハムの熟成度とグルタミン酸

生ハムの熟成度とグルタミン酸

仕込み :温度0〜4℃、2日間
塩漬け :温度4℃、15日間
塩漬け後1 :塩を洗い流し、温度0〜4℃、湿度90%、60日間
塩漬け後2 :温度2〜3℃/週上昇、湿度1〜2%/週低下、45日間
乾燥 :温度、低湿度、45日間
半熟成 :6ヶ月
完熟 :12ヶ月