PLANT BASED ✕ UMAMI

「神楽坂天孝」の新井 均シェフ VOL.2

  • 神楽坂天孝 新井均

VOL.1では新井シェフから、プラントベースの時は、動物性のものを使わないで天つゆを作り、衣素材に卵を使わないで四季の野菜をおいしい天ぷらにするというお話を聞きました。今回はその天つゆについてうかがいます。

江戸前ならではの天ぷらは、地産地消、東京湾の魚にこだわる(最近は水揚げが少なく年々こだわれなくなってきているとのこと)ことに加え、昆布を使わず、かつお節だけで出汁をとります。1リットルに約80gの花削りを使って出汁をとります。沸騰させず、ゆっくり煮出すそうです。

ではプラントベースの場合はどうするのか。
昆布と干し椎茸で出汁をとるそうです。干し椎茸はうま味の強い出汁がとれますが香りも強いので少しだけ足します。
昆布(グルタミン酸)×かつお(イノシン酸)でうま味の相乗効果でおいしい出汁になりますが、干し椎茸(グアニル酸)はかつおよりもうま味が強いので、かつおと同じ量ではなく、少なめに入れて調整するのがポイントのようです。

先代のお父様は一切、昆布を使われなかったそうですが、新井シェフは料理によって、かつおと昆布の出汁も使われています。
そのきっかけは?と尋ねると、かえってきた言葉は「うま味を知ったから」でした。

2010年にアメリカの「カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)」で行われた食の国際会議「ワールド・オブ・フレーバー」で京都の料理人の方々と出会ったことがきっかけで、うま味を勉強し、出汁の多様性や出汁の使い分けを学んだそうです。

天ぷらは、食材に含まれる水分が高温の油に触れて蒸発し、その替わりに油が入り込みます。コーティングした衣が壁になって内部にはゆっくり熱が入ります。よって、表面のみサクサクし、内部は水分が保たれて蒸し料理のような、やわらかい食感になるのです。この揚げ油の配合にもこだわりがあり、それは揚げる食材のうま味を最大限活かすためだと話されます。さらに新井シェフは「実は、まっさらの油より、揚げていく最後の方が油もおいしくなっていると思います。油の中に食材の香りも溶け込みます。食材それぞれのうま味を知ると、料理はおもしろくなりますね」。

さて、最終回は新井シェフの究極のエコ天ぷらをご紹介しましょう!必見です!

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