PLANT BASED ✕ UMAMI

「L‘Archeste」の伊藤良明シェフ VOL.1

  • L‘Archeste 伊藤良明

植物由来の材料でつくられた料理や食品のことをプラントベースフードと言いますが、これを一層おいしく食べるための、ひとつのポイントが「うま味」です。うま味を上手に活用することで植物由来の材料がとびきりおいしい料理になります。

今回は2016年にパリでオープンしたレストラン「L‘Archeste(以下ラルケスト)」オーナー、伊藤良明シェフにお話をうかがいました。
伊藤シェフは「レストランひらまつ」で18年勤務、2004年10月からは16区に移転したパリ店へ異動しシェフとして活躍、2014年7月末に退職。独立準備後、2016年9月、パリに「ラルケスト」を開業しました。オープン後、当時世界最速となる5ヵ月でミシュラン一つ星を獲得した話題のシェフです。

料理の基本的な考え方は「テール・エ・メール」(大地と海/英語ではサーブアンドターフ)。そのマリアージュを大事にしていると語る伊藤シェフ。週に2回みずからマルシェに足を運び、生産者と会話をしながらメニューをイメージします。そのみずみずしい野菜を使いつつ、「テール・エ・メール」の考え方が活きた料理に仕上げています。

パリでのプラントベースフードの広がりは勢いを感じるそうです。健康面や主義の人、中にはモード(ファッション的)の人も多いとか。調べて見ると、フランスでは1998 年から2018年の20年間に、ベジタリアンと自称する人の割合が0.7%から3.2%に増加(CREDOC調べ)したとしていて、ベジタリアンやビーガンの要素を柔軟に取り入れる「フレキシタリアン」とされる人は、5人に1人だと言われています。

シェフのお店では、ビーガンのみのお客様の予約は受けていません。食材はバランスが大事だと考えること、自身がその専門家として学びを深めていないことが理由です。ただ、4~5人のご予約で1人だけビーガンだったらお受けするそうですが、過去に反省も。まさに1人だけビーガンで、他の方の料理からのアレンジで提供。そのお客様にとても感動していただいたのですが、そのことで、自分の努力が足りていない、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいになったそうです。

「うま味を活かそう」と思って料理はしていないとする伊藤シェフですが「フランス料理の基本はブイヨンとフォンであり、結果的にうま味を活かした料理になっています。だからこそ、今後はビーガンの方へも自分らしく対応できるようにすることを、頭の片隅に置きつつ仕事に取り組むのが大事なのだと思います。なぜなら、野菜をはじめ食材の魅力の活かし方は無限大だと思うからです。ビーガンの方にもうま味が活きた、とびきりおいしい料理を召し上がっていただきたいです」。

「L‘Archeste」の伊藤良明シェフ VOL.2