PLANT BASED ✕ UMAMI

「ode」の生井祐介シェフ VOL.1

  • ode 生井祐介

植物由来の材料でつくられた料理や食品のことをプラントベースフードと言いますが、これを一層おいしく食べるための、ひとつのポイントが「うま味」です。うま味を上手に活用することで植物由来の材料がとびきりおいしい料理になります。

今回は東京・広尾のレストラン「ode」の生井祐介オーナーシェフです。アジアのベストレストラン50で2022年にアジア全域で13位にランクインし、ミシュランガイドでも1ツ星(4年連続)を獲得しています。生井シェフは東京生まれ。フレンチの料理人を目指して都内及び軽井沢のレストランで研鑽を積み、2017年に「ode」をオープン。いま東京で勢いのあるシェフのひとりです。

生井シェフに大きな気づきを与えてくれたのが軽井沢での5年間。農家さんの繁忙期は梱包が間に合わなくて朝から手伝いがてらいただきに行くと、トマトでもズッキーニでも自分の思い描いている大きさじゃないものが畑には一杯あり、まだ小さいものや、雄花が付いていたり、若葉が出ているとか。それらを食べてみると食感や風味も違う。その野菜の最盛期ではない終わりごろも、また違った味覚があり、それらは自分の料理に活かしたらどうなるんだろうという挑戦にもつながったと話します。海外で野菜をメインにした高級店が増えていることに「持続可能な料理という意味ではあると思っています。少なくとも野菜は“付け合わせ”ではない使い方をしたいと考えています」と生井シェフ。

いま小田原に畑を借りて、農家さんと一緒に障害を持った人たちの雇用も創出する農福連携にも取り組んでいるそうです。蕪や玉ねぎがよく育つと聞いて植えたらすごくたくさんできて、お店で使う量を超えた。さあどうするか。そこからが生井シェフらしい発想が活きてきます。茹でた蕪を乾燥させ、カラカラの直前まで乾燥させる。すると、食べたことのない新しい食感とフレーバーに驚いたそうです。トンカ豆みたいなあまやかな香りとか、バニラっぽい感じのものがあったり、感動したそうです。最近の論文で野菜を乾燥させることでグアニル酸が確認されることがわかっています。もともと野菜がもっているグルタミン酸と、このグアニル酸により、野菜の中で相乗効果が生まれ、生にはない食感やフレーバーを造り出しているのです。

「うま味を感じた時は、みんなリアクションは同じなのかなって思います。塩味だけのお料理だと、色々な意見が出るような気がします。口の中にうま味の余韻があると、ああ、おいしかったと、満たされるんじゃないでしょうか。うちの外国人スタッフや、海外からのお客様は、口の中の満足感を“うま味”と表現します。この隠れたフレーバー何だろうと考え、いま口の中で作用しているのがうま味だとわかるのだと思います」。味噌や醤油など、うま味に慣れ親しんでいる日本人よりも外国人の方が、うま味を感じやすいのかもしれませんね。

「ode」の生井祐介シェフ VOL.2