うま味レシピ

京都「瓢亭」髙橋義弘 氏の 牛肉のドライトマト締め

  • プロのうま味レシピ

髙橋氏一族が先祖代々受け継いできた京都の老舗料亭、瓢亭は、その印象的なたたずまいとシンプルながら魅力あふれる料理で日本中に知られています。創業から400年以上にわたって受け継がれてきた美食の伝統を父14代当主英一氏とともに支え、そして更に発展させている若主人、髙橋義弘氏が、自らの料理におけるうま味を語ってくれました。

「素材を生かす」といいますが、素材の風味が強いほど、だしもそれに見合ったうま味がなければバランスが悪い。バランスがよければ、だしに素材の味がグッと出てきますし、だしがしっかりしているぶん調味料も少なくて済むため、結果的に素材が生きてきます。 瓢亭の料理にだしが欠かせないことは言うまでもありません。けれども、私は、日本料理には馴染みの薄い素材とやりかたで、うま味を料理に生かせないかと試行錯誤してきました。今回、ドライトマトを使ったのは、日本料理の昆布締めから連想しました。単純に、「おいしいお肉が食べたい」という思いからです。海外では、噛めば噛むほどにおいしいお肉を口にすることがあります。調理法のみならず、うまく熟成されたお肉なのだと思いました。 私たち日本人は、まだまだ肉の扱いには知識も経験も乏しく、そんな中で味わい深い肉料理ができればと思い、考えついたのがこのドライトマト締めです。ドライトマトは、昆布と同じくグルタミン酸が多く含まれているので、牛肉のイノシン酸と掛け合わせることで相乗効果が得られるのではないかと考えました。うま味を持った料理は、程よく口の中に余韻が残り、とても心に残ります。日本料理の中でも「ほっとする」「ほっこりする」といった表現で、印象深い料理になります。 肉を噛みながら、しみじみとした味わい深さを感じていただければと思います。

▪︎材料(4人分)

  • 牛腿肉(脂と筋を取り除いたもの)...200g
  • 塩...少々
  • ドライトマト...20g
  • 酒...50㎖

▪︎作り方

  • 1. 牛肉は、3㎝角の太さ、長さ5㎝程度の棒状に切り、軽く塩をあてて1時間ほどおく。
  • 2. ドライトマトは酒に浸して半日置き、火にかけてやわらかく戻し、ミキサーにかけてペースト状にする。
  • 3. を一緒に袋に入れて、真空にする。冷蔵庫でそのまま1日置く。
  • 4. フライパンで四方の表面に焼き目を付けながら、中心部分が40度ぐらいになるように焼く。

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< プロフィール >

たかはし・よしひろ

たかはし・よしひろ

京都南禅寺の料亭「瓢亭」若主人。
十四代目当主である、父、髙橋英一氏とともに400年続く「瓢亭」の厨房に立っている。日本料理アカデミーの一員として日本料理の普及や新しい才能の育成にも力を注ぐ一方、自身の料理においては、2008年に「ベージュアラン・ デュカス東京」で開催された日仏交流150周年を記念したコラボレーション・ ディナーをはじめ、 大学卒業後に渡ったフランスでの経験を活かし、フランス料理の要素を取り入れた新たな懐石料理へのチャレンジにも積極的だ。