間違いだらけの「おいしさの表現」
味と香りはお互いに
影響しあっている

私たちは、食べ物の味わいを味、口中香、食感などによる総合感覚として感じており、食べ物を口に入れた瞬間、あるいは噛んでいる時に、これらをほぼ同時に感じるので、味、口中香、食感などを個々に区別することは非常に難しいのです。また、味と香り(口中香)は、お互いに影響しあって、味わいを強めていることがわかってきました。

香り(口中香)が味わい
を強める

香りが味を強める例として、バニラに含まれているバニリンという甘い香りの物質が、甘味の感じ方を増強させることが分かっています。これを利用しているのがバニラアイスクリームで、その甘味はバニラの甘い香りによってより強く感じられるのです。レモンの香りが、酸味を増強することや、磯の香りが塩味を増強させることもわかっています。

香りが味わいを強める例

うま味物質が口中香の感じ方を強める

最近、私たちの研究*1)から、味物質が口中香の感じ方に影響を与えることもわかってきました。チキンスープを連想させる4つの香り物質を水に溶かした「チキンの香り水」を作ります。この水に、うま味物質を添加すると、「チキンの香り水」の香りを含む味わいが、2.5倍強められることがわかりました。うま味物質をお味噌汁に適量添加すると、よりおいしく感じられるのは、うま味物質の添加によって味わいが強くなるからです。このように、脳で認識している味と口中香の感じ方は、お互いに影響しあっているのです。

口中香の感じ方のグラフ

うま味物質の添加が口中香の感じ方の強度を最大2.5倍強めた

うま味物質や香りの強い
食材を使って減塩を実現

この現象をうまく利用すれば、食べ物の減塩を実現できます。食べ物の味付けの際に、食塩を減らしてうま味物質を適量添加すると、より少ない食塩の添加量でも、味わいを強く感じられるために、満足感が得られ減塩できるのです。
また、お味噌汁を作るときに、香りの強いネギやナメコを入れると、食塩の添加量が少なくても満足感が得られ、おいしく感じられます。その他の食べ物でも、食べ物の香りを強める工夫をすることで、食塩の添加量を下げてもおいしく食べられることがわかってきました。味と香りの相互作用をうまく利用して、食べ物の減塩を実現してみませんか。

減塩の図

間違いだらけの
「おいしさの表現」