世界に広がるうま味の魅力
世界に広がるうま味

2008年は、池田菊苗がうま味を発見してから、100周年に当たる年でした。それまで、うま味の研究に成果を挙げてきた諸外国の研究者を東京に招き、記念シンポジウムを開催しました。そのときの発表論文は、American Journal of Clinical Nutritionの特集号に掲載されました。この雑誌はレベルが高いので、非常に厳しい査定を受けました。そのとき、筆者は「Glutamate: from discovery as a food flavor to role as a basic taste(Umami)」という題の論文を発表しました14)。題が良かったのでしょう。それ以後十数年の間、食品科学の分野でのcitation index(被引用回数)が世界一になりました。うま味の研究が、それほど注目を浴びていたのでしょう。
図24は、うま味インフォメーションセンターUIC)の英語版ホームページのニュースレター 配信登録者数を示しています。2008年1月から登録者数が急激に増えているのが分かります。これにはメディアの 影響が大きいと思われます。2007年12月のWall Street Journal紙には、うま味は欧米人にもなじみ深い食物(エスカルゴ、トマトケチヤップ、チーズ、アンチョビなど) に含まれていることが大きく報道されました。

うま味インフォメーションセンターの英語版ホームページへのニュースレター配信登録者数の変移

図24 うま味インフォメーションセンターの英語版ホームページへのニュースレター
配信登録者数の変移

また2008年7月には、ISOTのサテライトシンポジウムとして「New Frontiers of Taste in San Francisco」と題するイベントが行われました(図25)。 このシンポジウムには、研究者、ジャーナリスト、シェフなどが参加し大盛況でした。
2008年に筆者はNHKの外国人向け放送で、3回にわたってうま味の話をしました。これは各国の言葉に翻訳されて、世界各国で報道されました。

  • キャシー・サイクス博士
    キャシー・サイクス博士
    (英国ブリストル大学教授)
  • ギャリー・ビーチャム博士
    ギャリー・ビーチャム博士
    (米国モネル化学感覚研究所所長)
  • ジョン・プレスコット博士
    ジョン・プレスコット博士
    (ニューキャッスル大学準教授)
  • ハロルド・マックギー博士
    ハロルド・マックギー博士
    (フードジャーナリスト)
  • ティム・ハナイ
    ティム・ハナイ
    (マスター・オブ・ワイン)
  • 徳岡邦夫
    徳岡邦夫
    (京都吉兆嵐山本店総料理長)
  • トーマス・ケラー
    トーマス・ケラー
    (「ザ・フレンチランドリー」オーナーシェフ)
  • ヒロ・ソネ
    ヒロ・ソネ
    (レストラン「テラ」オーナーシェフ)
  • うま味発見100周年記念イベント 「うま味サミット イン サンフランシスコ」
  • うま味発見100周年記念イベント 「うま味サミット イン サンフランシスコ」
  • うま味発見100周年記念イベント 「うま味サミット イン サンフランシスコ」

図25 うま味発見100周年記念イベント 「うま味サミット イン サンフランシスコ」
New Frontiers of Taste in San Francisco (味の開拓者たち)

【文献】
14) Kurihara K. Glutamate: from discovery as a food flavor to role as a basic taste (umami). Am. J. Cin. Nutri. 90, 719S-722S(2009)

世界に広がるうま味の魅力