うま味インフォメーションセンター

活動報告

2012うま味レクチャーin福岡「うま味を知る!食材を活かす!」 うま味が引き出す九州の食材の魅力

2012.11.25

日  時 平成24年9月30日(日)13時~16時30分
場 所 中村調理製菓専門学校
参加者 221名
登壇者 京都「菊乃井」三代目主人 村田 吉弘氏 / 「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフ 脇屋 友詞氏 / 「エディション・コウジシモムラ」オーナーシェフ 下村 浩司氏 / NPO法人うま味インフォメーションセンター理事 二宮 くみ子
報告者 NPO法人うま味インフォメーションセンター 渡辺 章

◆レシピ(PDF)のダウンロード

NPO法人うま味インフォメーションセンターは、9月30日(日)午後1時より、中村調理製菓専門学校との共催で「2012うま味レクチャー in 福岡」を開催いたしました。

本うま味レクチャーは、昨年10月の新潟での開催に続く2回目の開催で、九州地区の料理人、シェフ、栄養士、調理師学校教職員、調理学研究者および食に関心の高い一般の方々を対象に、日本料理、中国料理、フランス料理の第一人者が、トークと調理デモンストレーションを交えてうま味が引き出す九州の食材の魅力を語り、うま味についての理解を深めていただく内容です。

当日は中村調理製菓専門学校の大講義室を会場に221名の方が参加され、西日本新聞にレクチャーの様子が掲載されました。 当センター理事長 栗原堅三、中村調理製菓専門学校校長 中村 哲先生による主催者挨拶に続いて、二宮理事より5つの基本味の一つであるうま味について、プチトマトを使ったうま味体験、うま味の基本情報、うま味物質を多く含む食物、うま味を感じる体の仕組み、うま味の相乗作用など、科学的な視点を交えながらレクチャーを行いました。

続いて、日本料理の村田吉弘氏、中国料理の脇屋友詞氏、フランス料理の下村浩司氏から、それぞれの料理におけるうま味を活かしただし、スープのデモンストレーションとうま味のお話し、さらにそのだし、スープを使って九州の食材のうま味を引き出す料理のデモンストレーションを行いました。

「菊乃井」主人の村田吉弘氏のレクチャーでは、初めに昆布だしとかつお節を使ってうま味の相乗作用を体験しました。 参加者に配られた試飲カップの中の昆布だしをまず半分だけ飲み、次にかつお節を口に含んで良く噛み、その後もう一度残った昆布だしを飲むと、最初に味わった昆布だしよりもずっと強いうま味を感じます。 これがうま味の相乗作用で、その作用を利用した一番だしのお吸物を試飲してうま味を実感しました。

次に、だしの引き方について科学的なデータを使って分かりやすく解説し、昆布とかつお節を使った一番だし、ドライトマト、ドライモリーユ(アミガサダケ)、鶏ムネ肉、塩(鶏肉重量の2%)を使ったNew Style Dashi、そして焼きあごと昆布を使ったあごだしのひき方をデモンストレーションで紹介いたしました。 また、グルタミン酸とイノシン酸の相乗作用によるうま味成分が豊富なだしは、カロリーがほとんど0(ゼロ)に近く、欧米の料理人から今たいへん注目されていることを紹介されました。この後の試食では、New Style Dashiを使った茶碗蒸しとあごだしを使った冷やし炊合せを召し上がっていただきました。

「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフ脇屋友詞氏のレクチャーでは、初めに中国料理におけるいろいろなスープ(湯(タン))の取り方について説明され、本日のレクチャー用に九州の食材を使ったオリジナルレシピーの上湯(シャンタン)の試飲を行いました。
清湯(チンタン)は最も基本となるスープで、鶏肉だけを使い、鶏肉のうま味が引き出された澄んだスープです。 毛湯(マオタン)は鶏足(もみじ)と豚ガラを使ってうま味を引き出したスープで、主に野菜料理や麺料理に使います。白湯(パイタン)は、鶏ガラ、豚ガラを強火でどんどん炊き白濁させたスープで、九州のラーメンスープとしても良く使います。 上湯(シャンタン)は、金華火腿(キンカホートイ)、豚モモ肉、鶏肉のうま味を引き出した高級スープです。

調理デモンストレーションでは、最初に「河豚と黒豚のうま味の澄ましスープ」の作り方を紹介し、試飲いたしました。 スープの材料は、黒豚のひき肉、干し貝柱、金華ハム、長ネギ、生姜と九州の食材として河豚(ふぐ)の骨で、金華ハム、干し貝柱、野菜のグルタミン酸と豚肉のイノシン酸の相乗作用による、うま味成分が豊富なコクのある澄ましスープを会場の参加者全員で味わいました。 次に、このスープを使い、青梗菜(チンゲンサイ)の葉の緑色を活かした「翡翠色の河豚と黒豚のおこげ料理」の調理デモンストレーションを行いました。

「エディション・コウジ シモムラ」オーナーシェフ下村浩司氏のレクチャーでは、初めに下村氏がプロデュースする料理を映像で紹介し、下村氏のフレンチの特長をお話されました。 下村氏のフレンチの特長は、1.軽やかな仕上がり、2.ユニークな着想、3.道理に即して確実においしいことで、油脂分に頼らず、食材の特長を活かし、うま味を活用して食材の特長を引き出し、食器、盛り付けにこだわって演出するフレンチです。
続いて、野菜ブイヨンを使い、フレンチでもうま味の相乗効果が体験できる試飲を行いました。用意された3つのカップは、①野菜ブイヨン(食塩0.3%)、①にうま味調味料0.1%を加えたもの、①に鶏ムネ肉のひき肉(①の分量の1/4)で、順番に試飲しました。

最初のスープは野菜の味がバラバラでまとまりがありません。次のスープはうま味調味料によってバラバラだった野菜の味がまとまっています。 最後のスープは、鶏肉のイノシン酸と野菜ブイヨンのグルタミン酸の相乗作用によりうま味を強く感じました。 日本のだしとは材料が異なるが、フレンチでもこのようにうま味の相乗作用を活用しているとの説明に会場の皆さまは納得の表情でした。 次にうま味の相乗作用を活用した「白レバーのムースとビーツのコンソメジュレ、黒胡椒風味」の調理デモンストレーションを行いました。 レバーを牛乳につける理由やミキサーではなくフードプロセッサーを使う理由を解説し、下村氏の考える料理人としての一端を披露されました。

この後、村田氏、脇屋氏、下村氏による調理デモンストレーションのメニューを参加者全員で試食し、
うま味を活かしたそれぞれの料理を堪能致しました。


最後に、本日のレクチャーに対する質疑応答と3名のシェフからのコメント、そして本日の調理をお手伝いいただいた中村調理製菓専門学校の先生、学生の皆さまを紹介し、当センター副理事長 山本 隆の閉会挨拶でうま味レクチャーを終了いたしました。
参加された方々から、日本料理、中国料理、フランス料理に共通するうま味がよく分かった、トップシェフのうま味を活かしたおいしい料理を堪能した、是非また開催してほしいなど、大変高い評価をいただきました。

当センターでは、うま味の理解・普及に向けて、このような活動をこれからも続けてまいります。
引き続きご支援よろしくお願い申し上げます。

会場の中村調理製菓専門学校入口
会場の中村調理製菓専門学校入口
うま味インフォメーションセンター栗原堅三理事長挨拶
うま味インフォメーションセンター栗原堅三理事長挨拶
中村調理製菓専門学校中村哲校長挨拶
中村調理製菓専門学校中村哲校長挨拶