うま味インフォメーションセンター

活動報告

スペイン国営ラジオで うま味についてのインタビューが放送されました

2013.06.11

日  時2013年5月4日 放送
放送局および番組名スペイン国営ラジオ"Esto es vida"
司会者ヨランダ・フレッチャ氏(RTVEプログラム責任者)
対応者アナ・サン・ガブリエル博士 (うま味インフォメーションセンター学術担当) / その他のパネリストとして : ピラー・リオボ博士(医学博士 内分泌学・栄養学) / イエス・コントレラ博士(バルセロナ大学 文化人類学教授) / ジャビエ・ジラ氏 (マドリッドソムリエ協会会長)
報告者栗脇 美緒 (うま味インフォメーションセンター事務局)

うま味インフォメーションセンターは2010年秋、スペイン・バルセロナのアジア文化広報センター"CASA ASIA"でうま味講義とティスティングを実施しました。その折の参加者の一人、スペイン国営放送プログラムディレクターのヨランダ・フレッチャ氏より、サン・ガブリエル博士にうま味についてのインタビューの依頼をいただきました。ガブリエル博士は、うま味の歴史、うま味の多い食材、そしてその生理学的機能について語り、そのインタビューは医学博士、人類学者そしてソムリエと多様な分野の専門家へのインタビューを加えた"味覚について"と題する番組として、2013年5月4日、スペイン全土に放送されました。うま味インフォメーションセンターは今回の機会を下さったスペイン国営放送の皆様に心より感謝しつつ、今後もうま味の正確な情報をお伝えしてまいります。

本プログラムはスペイン語で放送されました。スペイン国営放送サイトURLはこちらです。
http://www.rtve.es/alacarta/audios/esto-es-vida/esto-vida-gusto-04-05-13/1824258/



"味覚"

このプログラムは心身の健康についてスペイン国営放送ラジオ 5がお送りします。 今日は、味覚―私たちが、食べ物を食べるときに感じる感覚―と、残りの4つの感覚がどのように影響し合うかについてご紹介したいと思います。まず5基本味について、そう4つではなく5つです。甘味・苦味・塩味・酸味、そしてうま味。うま味はスペインの代表的な食材、イベリコハムにも多く含まれています。

" taste "というと、ファッションの嗜好や教育レベルに関連深い主観的な好みのことと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、今日はもう一つの" taste " - 味覚についてお話しましょう。食べることの第一の目的は生命の維持ですが、生物学的な要素のほかに、伝統や慣習が影響するときもあります。

うま味
それでは、多くの食品に含まれるうま味について語りましょう。
甘味・苦味・塩味・酸味、そしてうま味。ラジオをお聞きのみなさんは最初の4つの味についてはよくご存じですが、実は1世紀前にもう一つの基本味が発見されました。うま味です。今や人気のレストランがどんどんこのうま味を取り入れています。
日本人科学者の池田菊苗博士が1908年にグルタミン酸がこの味をもたらすアミノ酸であることを発見し、"うまい(おいしい)"という日本語をもとにうま味と名付けました。
日本のうま味インフォメーションセンターはうま味についてリサーチしている団体です。東京にいるAna San Gabriel博士をお呼びしましょう。

Yolanda- おはようございます。
Ana- おはようございます。
Yolanda- 今日は第5の基本味うま味について科学的な視点からお話しいただけますか?
Ana- はい。2000年から2002年にかけて主要な学術論文二つが発表され、今ではうま味が第五の基本味であることに異論をはさむ人はいません。
Yolanda- 第5の基本味として認められたのですか、それとも残りの4味を引き立てるものとして?
Ana- 第5の基本味として認められています。うま味とは別に基本味を強める味の可能性も追求していますが、うま味の場合は第5の基本味といえます。
Yolanda- うま味はどのような味でしょうか?
Ana- 身近なものでは、うま味はチキンスープの味です。甘味の場合の砂糖が代表的な分子であるように、うま味の場合はグルタミン酸が代表的です。しかし、グルタミン酸のほかにもアミノ酸ではアスパラギン酸、アミノ酸以外ではグアニル酸やイノシン酸といった核酸類がうま味を付与します。
Yolanda- グルタミン酸のほかにもうま味物質はありますが、代表的なものはグルタミン酸ということですね。
Ana- そうです。
Yolanda- グルタミン酸は天然食材に含まれている場合のほかに、食品中に人工的に添加されることもありますか?
Ana- そういう場合もありますし、燻製や発酵食品中のグルタミン酸のように天然由来の場合もあります。たとえば、スペインの代表食材、イベリコハムは、熟成期間が長ければ長いほど、グルタミン酸の量が増し、よりおいしくなります。
Yolanda- イベリコハムあるいはセラノハムはうま味豊かな食材の代表例ですか?
Ana- はい。でも、普及品のハムでも、トマトと同じかそれ以上のグルタミン酸を含みます。手作りや工房で昔ながらの作り方をしている場合は、1年以上長く熟成させるので、うま味はもっと多くなります。私たちの分析では、このハムは100gあたり1gと、パルメザンチーズ並みにグルタミン酸が含まれます。
Yolanda- 他にはどんな食材にうま味がありますか?
Ana- 野菜、特にトマトやブロッコリー、エンドウ豆など野菜にはグルタミン酸が多く、肉類にはイノシン酸が多く含まれます。この2つの物質を組み合わせて作ったスープストックはうま味が豊かで、各国に個性豊かなスープストックがあります。
Yolanda- うま味はフライドポテトのような塩味のスナックにもありますか?
Ana- はい。
Yolanda- スナックにはうま味が多く入っていますか?
Ana- 正確にはわかりませんが、スナックは塩分が多く、またMSGが添加されている商品もあります。
Yolanda- 地中海沿岸地域の食事のうま味についてはいかがですか?あなたは日本にお住まいですが、この地域の食生活についてはご存じですよね。
Ana- はい、うま味は多いと思います。とくにスペインでは、パエリアを作るときに魚貝のだしとトマトを使いますが、これらの食材は大変豊かです。ですから、私たちは気づいていないけれど、うま味をとても多く、頻繁に味わっているのです。
Yolanda- 中国人や日本人はうま味を調理でも使うので、うま味への関心はさらに高いのですか?
Ana- 調理で使うからというより、和食は油脂の使用量が少ないため、料理の味付けにうま味を多く使うことが多くなるので、うま味への関心が高くなるのだと思います。魚介類や海藻でだしを取りますが、そのだしには純粋なうま味が多く含まれています。日本のだしにはアミノ酸ではグルタミン酸が抜きんでて多く、アミノ酸以外では核酸類のイノシン酸が多く含まれています。
Yolanda- うま味の多い食べ物はおいしく、唾液の分泌を促進するのですか?
Ana-はい。適量のうま味は唾液の分泌を促します。言葉で表現するなら、口の中から水がわき出すような感じです。
Yolanda- どうしたら、その感覚を体験できますか?
Ana- 私たちUICはたくさんのデモンストレーションを実施してきました。たとえば、熟したトマトをゆっくり噛みます。30回ほど噛むと甘味と酸味のあとにそれとは別の、もっと長く残る味を感じます。セラノハムを使うともっとはっきりわかります。
Yolanda- 特に舌のある部分でうま味を感じるということですか?
Ana- 基本的には、すべての味蕾にはうま味の受容体があります。舌の味覚マップは最近あまり使われなくなりましたが、食べ物を飲み込むときに通る場所、舌の裏側や軟口蓋の部分はうま味にもっとも敏感です。
Yolanda- 加齢によりうま味を感じる能力は低下しますか?
Ana- 甘味と塩味については、低下は顕著ですが、うま味に関しては十分な研究データがないので判断できません。けれども、羊水や母乳はグルタミン酸が多いですし、だしのグルタミン酸量は母乳と変わりません。これはとても興味深いことで、私たちにとってうま味はとてもなじみ深い味だから好まれるということになると思います。
Yolanda- 動物にはうま味がわかりますか?
Ana- パンダにはうま味がわかりません。なぜなら、うま味の受容体の機能を持たないからです。彼らは笹ばかり食べるので、うま味は不要なのでしょう。またある種のイルカや魚類は餌をかまずに飲み込むので、同様にうま味の受容体がありません。ですが、このような例はごくわずかです。
Yolanda- 私たちが話していることは、ごく最近の研究成果ですね?
Ana- すべてこの10年間にわかったことです。
Yolanda- どなたがどんなきっかけでうま味を発見したのですか?
Ana- ドイツに留学し、そのころはまだ日本になかったトマトやアスパラガスを口にした科学者、池田菊苗博士が1908年に研究を始めました。彼はトマトやアスパラガスの味の中に生まれ育った京都で慣れ親しんでいただしと同じ味があると感じました。帰国後、博士は昆布からその物質を抽出することに成功し、うま味と名付けました。うま味という言葉は日本語で美味しいという意味の"うまい"が語源です。そのために、うま味は日本人にしかわからないと長い間思われていました。ですが、うま味の受容体が発見されたために、ようやく世界共通の味覚と認められるようになりました。
Yolanda- それで、近年うま味の研究がさかんになったのですね。
Ana- はい、おっしゃるとおりです。
Yolanda- うま味インフォメーションセンターのサン・ガブリエル博士は日本で活動していますが、センターのウェブサイトでは、うま味に関する多くの情報が掲載されていて、大変参考になりました。
Ana- どうもありがとうございました。