うま味インフォメーションセンター

活動報告

フランス ポール・ボキューズ・インスティテュートでのうま味レクチャー

2014.10.08

日  時 2014年8月18日
場 所 フランス リヨン ポール・ボキューズ・インスティテュート
主催者 ポール・ボキューズ・インスティテュート / NPO法人うま味インフォメーションセンター
講演者 ギャリー・ビーチャム博士(モネル化学感覚研究所長) / 二宮 くみ子博士 (NPO法人うま味インフォメーションセンター理事) / アナ・サン・ガブリエル博士 (NPO法人うま味インフォメーションセンター学術担当) / 林 大介氏 (日本料理人、日本料理アカデミーロンドン支部) / 長江 桂子氏(パティスリーシェフ)
参加者 インスティテュート所属の学生、教師・研究員など約60名
報告者 栗脇 美緒 (NPO法人うま味インフォメーションセンター 事務局)

フランス料理界の重鎮、ポール・ボキューズ氏の名を冠したポール・ボキューズ・インスティテュート(PBI)は設立以来25年にわたり、調理技術、ホテル経営教育を通じた調理師養成機能に加え、官能評価、嗜好調査や食行動に関する研究を実施する研究センターを併設し、幅広いジャンルをカバーした活動を行っている組織です。このたび、弊センターはPBIの要請を受け、研究者と料理人によるうま味レクチャーを行いました。
レクチャーにはPBIの学生(内約6割が南米やアジアからの留学生)、そして教職員、研究者など約60名の方が参加され、うま味について学びました。米国モネル化学感覚センター所長のギャリー・ビーチャム博士はうま味の発見、1950年代に実施された大規模な米国でのグルタミン酸ナトリウムの味覚特性に関する研究の内容等を紹介、二宮くみ子理事がうま味の学術基本情報、うま味物質、食材中のうま味物質、およびうま味が料理人に与えた影響について説明。また低濃度の食塩水(0.3%)とそれにグルタミン酸ナトリウムを少量(0.02%)加えたものを比較することで、うま味が塩味とは異なること、塩味に深みと広がりを与える効果があることを参加者の方も実感されました。Ana San Gabriel博士は舌だけではなく消化管にもグルタミン酸受容体があり、タンパク質の消化吸収に係る機能があることを紹介しました。
ロンドン在住の料理人林大介氏とフランス在住パティシエの長江桂子氏によるデモンストレーションでは、昆布だし、一番だし、ニュースタイルだし(ドライトマト・ドライモリーユ・鶏ひき肉で引いただし)のデモと試飲、ニュースタイルだしを使ったピーナッツスクアッシュと春菊の2層スープの試飲、長江桂子氏は、八角で風味をつけたトマトクリアジュレと色とりどりのトマトを合わせたジュレ・ド・トマト、洋ナシのソルベに牛乳とパルメザンチーズで作ったパルメザンクリームとロケットサラダを添えたデザートを紹介しました。参加者は林氏のデモではうま味素材から水にうま成分を抽出することで'だし'ができること、長江氏のデモではデザートの甘味とは関係がなさそうに思えるうま味も使い方次第ですっきりした甘味とあとに余韻を残すうま味を楽しめることを学びました。
アンケートの結果から参加者の多くの方々が、この講義を通じて、グルタミン酸だけでなく、イノシン酸やグアニル酸もうま味物質であることうま味には減塩や唾液分泌促進などの機能があることを学んだことがわかりました。
うま味インフォメーションセンターは、今後も、次世代を担う各国の調理師学校の生徒の方々や講師の方々に向けても積極的に情報発信をしていきます。

講義風景
講義風景
二宮くみ子氏講義
二宮くみ子氏講義
アナ・サン・ガブリエル氏講義
アナ・サン・ガブリエル氏講義
林大介氏
林大介氏
長江桂子氏
長江桂子氏
シェフとアシスタントたち
シェフとアシスタントたち
うま味テイスティング
うま味テイスティング
長江氏デモンストレーション~パルメザンクリーム~
長江氏デモンストレーション~パルメザンクリーム~