うま味インフォメーションセンター

活動報告

東北大生、和食の文化を科学する!

2023.01.26

「おいしい」という感覚は、食べる人の好みや体調、雰囲気、そして食文化によって変わってきます。この感覚を科学的に解明することは可能でしょうか。
近年、世界中で「おいしさ」を感じるメカニズムを科学的に解明して実生活に活かすための研究が進められています。成分や食感などおいしさを構成する要素を探り、新しい味わいを組み立てる取り組みも進んでいます。


うま味インフォメーションセンター(UIC)は2023年1月26日、東北大学にて、和食とうま味に科学的にアプローチする授業を実施しました。この講義は、東北大学の内外の講師がそれぞれの分野から和食について語る「基礎ゼミ 和食の文化を科学的に理解する」の一環です。UICは、和食の土台である“うま味をたっぷり含んだ「だし」”を軸に、講義と実習を行いました。
当日は、法学部、医学部、教育学部、文学部など様々な学部の1年生25人が参加。グループに分かれて観察や試食、実験に取り組みました。当日の講師を務めたのはUICの澤晶子理事です。2時間の講義は、以下の充実した内容で進みました。

基本味のひとつである「うま味」を体感
講義の始まりは、うま味とは何かという基本学習から。説明を聞きながら、ドライトマトやかつおだしなど、うま味を多く含む食品をテイスティングして、うま味の特徴を確認しました。さらに、昆布だしとかつおだしに含まれるアミノ酸系と核酸系のうま味物質を組合せると、うま味を数倍にも強く感じられる「うま味の相乗効果」等も体感しました。

各種だしの観察・キーワード出し
和食の基本的なだし素材である煮干しと、昆布の実物を観察。その匂いや手触りも確認しました。さらに、利尻昆布、羅臼昆布、煮干しをそれぞれ水で抽出した「水だし」を試飲して、その特徴をあらわすキーワードをいくつか、各々付箋に記入しました。

グループワーク:うま味物質(グルタミン酸)濃度の確認実験
先に試飲した3種の「水だし」(利尻昆布だし、羅臼昆布だし、煮干しだし)に含まれるグルタミン酸の量を比較する実験です。試薬を用いて、グルタミン酸が多いほど希釈しただしの液体が青くなる様子を確認しました。「うま味を含むだし」という共通点があっても、核酸系のうま味物質を多く含む煮干しだしでは昆布だしほど色がでない様子を、学生の皆さんは興味深く観察していました。
さらに、食品企業での一例として、商品開発で官能評価がどのように活用されているかなどの簡単な説明を聞いたあと、後半のグループワークを実施しました。

   

酵素を用いてグルタミン酸の量を視覚化する実験。昆布(右)はグルタミン酸量が多く、イノシン酸が主なうま味成分であるいりこだし(左)はうま味があっても、グルタミン酸量は少ないことを色で確認しました。

グループワークと発表
「あなたは3つ(利尻・羅臼昆布、いりこ)のだしを売り出したい会社のマーケッターです。各々のだしの特徴をわかりやすく説明するにはどうしますか?」という質問に対して、だしの観察・試飲で付箋に記入した「だしの特徴」のキーワードを出し合い、共通点を探してカテゴリー分けしました。さらに、それぞれのだしの特徴や違いを説明するのにぴったりな要素を見つけ出し、班ごとに発表しました。

 

講義後のアンケートには多くの活き活きとした感想が寄せられました。
グループワークや他グループの発表を通して他の人の感想に触れ、おいしさの感じ方が人によって違うことを改めて実感した人が多くいました。

活気にあふれるグループ発表の様子

- (他のグループの感想を聞いて)だしを料理に日頃から使うという経験値の差が人それぞれに現れているのかなと感じた。

-昆布の匂いを嗅いだ時、日高昆布だけは匂いから味を想像することができ、人は記憶によって味わっていることも実感できた。 

- だしの味比べやグループワークでの話し合いにより、「うま味」というものを自分なりに理解することができた。

- 同じものを飲んでいても感じることが一人ひとり違って、何を大切にしているのかを知れたりして、だしの奥深さを感じられた。


学生の皆さんが、今回の授業で得た経験をそれぞれの分野や生活の中で活かしていただけますよう、期待いたします。