うま味インフォメーションセンター

活動報告

グローバルヘルスの国際会議PMAC2024のサイドイベントにUICから2人が登壇

2024.01.23

2024年1月22日から6日間にわたって、タイのバンコクにてグローバルヘルスの国際会議PMAC(Prince Mahidol Award Conference)の年次大会が開かれました。
PMACは、タイに近代医療を導入したマヒドン王子を記念した、タイ王室が主催する権威ある国際保健会議で、グローバルヘルスの重要な課題について有識者による討議が行われます。2024年のテーマは「Geopolitics, Human Security and Health Equity in an Era of Polycrises(ポリクライシス⦅複合危機⦆の時代に地政学的側面や安全性、そして健康の平等性の面からグローバルヘルスを考える)」で、多くのサイドイベントが開催されました。

うま味インフォメーションセンター(UIC)の西村敏英副理事長と畝山寿之理事は、23日のサイドイベント「Promoting Healthy Food and Well-being in an Era of Polycrises (複合危機時代の健康的な食と幸福の推進)」に登壇しました。主催は、Sensory Science*を軸とした研究者と民間企業のネットワークSSBW**です。
Sensory Science:感覚科学。五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通じて、体の外の世界を私たちがどのように認識しているのか、感知した情報が嗜好や感情にどのように影響するのかを研究する科学分野。
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SSBW:Network for Sensory Science for Better Well-being “より良い幸福のための感覚科学ネットワーク”の略。タイとアセアンにおいて、最新の感覚科学の知見を共有し、健康で持続可能な食環境の創出を目指すことで、社会的なウェルビーイングを高めることを目的としている。
同イベントでは、うま味と食品の風味やコクに関する研究、ポリクライシスが食料システムの安全性に及ぼす影響、感覚科学と幸福の関係が議論されました。

西村副理事長はセッション1.「科学と技術からのアプローチ」 に登壇。"Effect of Umami Substances on the Enhancement of Palatability and Koku of Food(食品のうま味物質が風味とコクの感覚を高める効果)" と題して講演を行いました。
博士は、食品をおいしいと感じることは人々の健康に大きく貢献し、たとえ材料が限られている場合でも、おいしく健康的に食べることが私たちのウェルビーイング(幸福で健康な状態)につながると述べ、うま味物質の活用とコクの感覚を高めることで 限られた食材を好ましくすることができると語りました。さらに、うま味物質とコクの感覚の増強効果との関係について詳しく説明しました。

口に入れた食べ物に風味やコクを感じる時の重要な要素は、味と香りです。そして、味と香り、テクスチャーを包括したコクが食べ物に複雑さを与え、満足感を高め、味わいを強めます。また、脂質やうま味物質、苦味成分、粘度などは、コクの感覚知覚の持続性を強める性質を持ち、長くしっかり感じられる風味にします。
博士は、コクは「複雑さ」、「広がり(濃厚さ)」、「持続性」で構成されると語り、コクの感覚は食品の風味に関わる客観的な要素であること、これがうま味物質と脂質によって増強されることで、食のウェルビーイング価値につながることを説明しました。
博士は講演後のパネルディスカッションにも参加。パネルディスカッションでも、コクについて大きな関心が集まりました。

一方、畝山博士はインプットセッション"Global Survey of Science and Economics on [Food for Well-Being]”に登壇。Nature誌が行ったウェルビーイングに関する調査の解説をベースに、幸福で健康的な生活における食の重要性、とりわけタンパク質・アミノ酸栄養がウェルビーイングに大きく影響すること、特に食べ物のおいしい「味」が重要で、うま味の果たす役割は大きいことを述べ、減塩効果をもつうま味には、さらなる研究の価値があると述べました。また、プロテインレバレッジ仮説についても解説しました。    
超加工食品(UPF)の摂取によるウェルビーイング低下の懸念は、食品中のタンパク質と食物繊維が脂肪・炭水化物・食塩で薄められていることに由来するという仮説
畝山博士はSESSION 2. Approaches from Public Health, Food Industry and Economy にもパネルディスカッションの座長として参加しました。

会場には約70人の参加者が集まり、立ち見が出る盛況ぶりでした。
おいしい味わいと健康、ウェルビーイングの間には密接なつながりがあります。
タンパク質や野菜類など不足しがちな食品を上手に摂取し、塩分や糖質など過剰摂取を避けるべき栄養成分をほどよく控えるためにも、うま味物質やコクがもつ効果を活用するのが望ましいということが改めて認識されました。