西村理事長 第16回 Pangborn Conference にて発表
2025.10.31
 
                        						2025年8月17日~21日、米国フィラデルフィア(16th Pangborn Sensory Science Symposium)が開催されました。2年に1回開催される官能評価に関する国際的な学会で、味覚センサーの発展や嗅覚センサーの研究、食品や日用品の官能評価に関する最新の知見が発表され、味覚や嗅覚などの感覚研究についてアカデミアや企業の官能評価の専門家が集うシンポジウムです。登録者は1000人以上です。今回、うま味インフォメーションセンター(UIC)の西村理事長が「醤油のコク知覚に対するうま味物質の増強効果」についてポスター発表をしました。
発表の内容は、以下の通りです。
木桶で製造した醤油はステンレス製タンクで製造した醤油に比べ、うま味物質である遊離グルタミン酸と遊離アスパラギン酸の濃度が高く、多くのうま味物質が含まれていることが分かりました。また、官能評価ではコク知覚の要素である「広がり」と「持続性」が強い結果となり、これは木桶で製造した醤油の方が多くのうま味物質が含まれていることに起因することが判明しました。そして本研究は、食品のコク知覚を客観的に評価した初めての報告となります。

発表ブース(18日午後2時~3時30分)では、ポスター発表と併せてコク知覚を分かり易く理解できるテイスティングも準備しました。味噌スープ(味噌粉末に水を加えただけの液体)をベースに、うま味物質(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムの混合物)を来場者ご自身に入れてもらい、違いを実感していただくというものです。50人以上が体験してくれ、全員が、うま味物質によるコク増強効果をご納得、終了時間の午後3時半を過ぎても来場者が後を絶たず、大盛況でした。特徴的だったのは、モネル化学感覚センター(モネル研)の研究者から、今回の味噌スープに味噌由来の沈殿物があることへの感覚評価への影響に関するご指摘があったことです。本学会ならではの視点でした。
なお、このテイスティングでは、本シンポジウムに参加され、UICでも大変お世話になっている東京家政学院大笠松千夏特任教授に多大なサポートをいただきました。西村理事長のポスター説明とのテイスティングのセットで、うま味物質によるコクの増強が、訪れた方々の記憶に残る形となりました。
シンポジウム終了後の翌日は、モネル研を訪問し、Dr. Ben Smith所長、Dr. Valentina、Dr. Gary Beachamp先生と約1時間、「Koku sensationの定義とうま味物質によるKoku増強効果」の説明をし、ディスカッションを行いました。
ディスカッションでは、「うま味物質の感覚における人種差」や、「コク味物質は、本当にヒトの感覚を増強するか?」といった質問がありました。今後も、コク、コク味物質、うま味のコク増強効果など、引き続きモネル研との情報交換をしていく予定です。

