うま味インフォメーションセンター

活動報告

WHO「代替塩(LSSS)」草案に意見書を提出

2023.04.30

塩分が過多な食事は、高血圧や脳卒中を引き起こすなど、健康に悪影響をもたらします。WHO(世界保健機構)によると、塩分(ナトリウム)の過剰摂取が原因で亡くなる人は、世界中で年間300万人に上ります。塩分の取り過ぎは、グローバルな健康課題なのです。

減塩の方策の1つに、ナトリウムに置き換える「代替塩(LSSS)」の使用があります。代替塩とは、グルタミン酸ナトリウムや塩化カリウムなどを活用した一連の調味料のことで、低ナトリウムでありつつも、味覚的には塩分と同じ味わいを得ることができます。おいしく減塩できるとして世界的に注目されていますが、代替塩の使用についてのWHOのガイドラインはまだ定まっていません。  
こうした中で、WHOは3月23日、代替塩使用ガイドラインの草案「Draft WHO guideline: use of low-sodium salt substitutes」を発表。加盟国や関連団体に向けて、草案に対する意見書を募集しました。

うま味インフォメーションセンター(UIC)はこの草案を支持しつつ、草案に用いられたスコーピングレビュー(ScR)が2021年9月までの文献を対象としており、その後の有益な科学論文情報が含まれていないことを懸念しています。    
ここ数年、うま味を上手に活用することで例えば日本では1日当たり12.8-22.3%(約1.27–2.22 g相当)の減塩が可能であるといった調査結果(※1)など、有効な論文が相次いで発表されています。

そこでUICは正規のルートに基づき、WHOに意見書を提出しました。    
UICが推薦する論文には、上記に加えて、米国で4000人以上の成人を対象に行われた食塩をうま味物質(グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸)に置き換える実験に基づく研究(※2)など、6件が含まれます。

※1 「うま味物質の活用で、日本の国内減塩目標は達成可能である」と結論付けた2023年発表の研究。
論文名:Modelling of salt intake reduction by incorporation of umami substances into Japanese foods: a cross-sectional study (BMC Public Health1 ;23(1):516. doi: 10.1186/s12889-023-15322-6.)
執筆者:Shiori Tanaka, Daisuke Yoneoka, Aya Ishizuka, Megumi Adachi, Hitomi Hayabuchi, Toshihide Nishimura, Yukari Takemi, Hisayuki Uneyama, Haruyo Nakamura, Kaung Suu Lwin, Kenji Shibuya, Shuhei Nomura.        

※2 「うま味成分を使用することで、料理のおいしさを損なうことなく、塩分摂取量を減らすことができる」と結論付けた2022年発表の研究。
論文名:Salt intake reduction using umami substance-incorporated food: a secondary analysis of NHANES 2017-2018 data. ( Public Health Nutr. 2022: 1:1-8. doi: 10.1017/S136898002200249X. Online ahead of print.)
執筆者:Nomura S, Tanaka S, Eguchi A, Kawashima T, Nakamura H, Lwin KS, Yamasaki L, Yoneoka D, Tanoe Y, Adachi M, Hayabuchi H, Koganemaru S, Nishimura T, Sigel B, Uneyama H, Shibuya K.

書面の提出は4月30日付でUIC西村敏英副理事長により実施されました。なお本提案書を提出したことを、下記機関の担当者とも情報共有しています。       
・国立健康・栄養研究所       
・厚労省栄養指導室(産学連携イニシアティブ事務局)       
・日本食品産業センター       
・日本高血圧学会減塩部会       
・日本栄養士会

意見書本文および提案した論文の詳細は下記をご参照ください。      
WHO Consultation from UIC.pdf       

UICは、うま味による「おいしい減塩」がWHOの減塩目標に大きく貢献できるという事実を、今後も積極的に各方面に提案していきます。