東北大学「『和食』の文化を科学的に理解する」にてうま味の講義
2025.12.25
うま味インフォメーションセンター(以下、UIC)は、2025年12月25日、東北大学で1年生を対象とした特別講義を行いました。
本講義は、同大学の正規授業である学問論演習「『和食』の文化を科学的に理解する」の一環として実施されたものです。本演習は、東北大学文学部教授でありUIC副理事長も務める坂井信之教授が担当教員で、企業や外部団体とも連携しています。UICは2016年から毎年本講義を担当し、座学・実食・実習を通じて、「だしのおいしさやうま味を体感し、うま味を伝える」ことを目的に実施しています。普段、だしを取って料理をする機会があまりない学生にとって、体感をとおして学べる本講義は貴重な機会となっており、毎年楽しみにされています。
当日は、医学部、農学部、教育学部など6学部から集まった25名の学生が参加。講師はUIC理事の木戸妥恵、実演はUICの門田浩子が担当しました。

まずは、「おいしさとうま味の関係」や「食品中のうま味物質」などの基礎知識を説明。さらに、昆布、かつお節、干し椎茸、煮干しといった代表的なだし素材について、現物を見せながら説明しました。煮干しだしの下処理体験では、煮干しの頭やはらわたの取り方がわからず、「粉々になってしまう」と戸惑う声も上がりましたが、コツをつかむとスムーズにできるようになっていました。だし取りの実演では、学生たちがだしの香りを確かめながら、科学的根拠に基づいた素材ごとに異なるだしの取り方を学びました。


続く「体感」パートは、グルタミン酸を豊富に含むドライトマトのテイスティングから始まりました。20~30回ゆっくり噛みながらよく味わって、グルタミン酸のうま味を感じ取ります。「持続性がある」「舌全体に広がる」「唾液の分泌を促す」といったうま味の3つの特徴を理解していただきました。
次は、だしのテイスティングです。昆布、かつお、干し椎茸それぞれの単独のだしを味わったあと、「昆布×かつお」と「昆布×干し椎茸」の合わせだしを作り再び味わうと、味わいの変化に驚きの声が上がりました。昆布だし(グルタミン酸)とかつおだし(イノシン酸)、昆布だし(グルタミン酸)と干し椎茸だし(グアニル酸)をそれぞれ合わせると、「うま味の相乗効果」で単独のだしよりも飛躍的にうま味が強くなることが明確に感じられたようです。
さらに、味噌湯に単独のだしや合わせだしを加えた7種類を味わい、好みものを選んでもらいました。その結果、25名中15名が「昆布×かつお」の合わせだしを選択。「単独だしより味がまろやかで味噌汁にしたときにバランスが良い」「強すぎず奥行きがあるからではないか」といった分析がされていました。

塩もみきゅうりを使った実験では、通常の食塩濃度のものと、約3割減塩しMSG(グルタミン酸ナトリウム)を加えたものを比較して味わいました。学生から「こちら(MSG入り)のほうがまろやかに感じた」「減塩でもおいしい」という声が上がり、うま味が加わることで、野菜の苦味が和らぎ、減塩でもおいしくなることを実感できたようです。
体験ごとに感じたことをシートに記入し、最後に「周囲に伝えたいこと」や「講義で一番有意義だったこと」を自分の言葉でまとめてもらいました。
■周囲に伝えたい、だしやうま味、うま味物質の特徴(抜粋編集)
- 日本のだしは海外と比較して抽出成分がうま味物質に特化され、うま味主体の雑味のない仕上がりになる。
- アミノ酸の種類が「少数精鋭」で入っている点は、無駄を省く日本の文化を表しているのかもしれない。
- 高血圧に悩む両親や祖父母は、運動をしているが効果が現れない。だしやうま味を使えば、塩分を控えても料理に深みが増し美味しくなり、改善する可能性があると思った。
- うま味は味わいを引き立て、おいしさを保ちつつ減塩できる。単純なおいしさだけでなく、私たちの健康的な食生活を支える味覚として非常に期待されている。
- うま味は普段の食事ではっきりと意識することはないが、だしで味噌湯の味が大きく変わるように、料理の味をより良くするために必要不可欠なもの。
- 特にかつおだしを伝えていきたい。干し椎茸や昆布に比べて安価で抽出時間も圧倒的に短いため、一人暮らしでも手軽にだしを楽しめると感じた。
■講義で一番有意義だったこと(抜粋編集)
- だしを取るときの温度や時間を、科学的な観点から知ることができた。
- だしの取り方をデモンストレーションで、学ぶことができたこと。
- 「うま味」と「旨味」の違いが明確にわかった。
- ドライトマトを味わってうま味を体感したことで、今後うま味が含まれる物を食べたときにもわかるようになったと思う。
- うま味の相乗効果で、ここまではっきりとおいしくなるとは思わなかったので驚いた。
今回の講義では、学生の皆さんが協力しながら体験に取り組む姿や、驚きとともにうま味の奥深さを発見していく様子が大変印象的でした。一人ひとりの感性で、「だし」や「うま味」について伝えてくれた言葉の数々は、UICのうま味普及活動にとっても大きな成果といえます。
今回参加くださった皆さんが、自ら感じ取ったうま味の魅力を未来へとつないでいかれることを願っています。
参考情報:
うま味の基本情報 | 特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター
食材別うま味情報 | 特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター